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-たりだけの会話 -

時は我々の味方だ。

もはや僕達を捜し出そうとする者はいない。
時は流れ、世間は僕たちのことを忘れてゆくのだ。

少し前までは毎夜、好奇心と畏怖の念を抱いて屋敷に 近づく若いバンパイヤたちや、日中の騒きに紛れて 憧れの気持ちでいっぱいの人間たちが、絶えずこの辺りにいた。 勿論そんな輩にこっちの気配を感じさせるほど、 僕も甘くはないけれど。

でももう、みんな来なくなった。

ただデビッドだけが(いつのまにか)ここに居座っている。

...

僕とデビッドは言葉を交わさない。毎晩サロンで顔を合わす度に デビッドは穏やかな視線を僕に投げかけるが、僕は無視する。 今は気が向かないだけだ。いつか、また喋るかもしれないけれど。

彼はいつのまにか出かけて行く。レスタトの眠る教会へ、足繁く 通っているのを、何気なく知らせてくれる。でも僕はそんなことには 興味がない。

僕はずっと、眠るレスタトと会話を続けているからだ。

...


「おはようレスタト。不思議な夢を見たよ」
ジャングルの中、君の母親ガブリエルが裸で雨に打たれて いたんだよ。濃い緑の中、彼女は透き通ってた。

「おはようレスタト。今日、ドストエフスキーを読んだけど、 クロウディアと3人で罪について大討論した時を覚えてるかい?」
あの時は僕一人、殺しの罪と内なる神の裁きについて語ったんだ。 君は、ニーチェを引用して、我々と人間と、何が「罪」になるかは 別だ、と説いたね。でも僕はやっぱり君は間違ってると思うよ。

「おはようレスタト。今日は海辺へ行って来るよ」
白い波を月光でめでるんだ。クロウディアが好きだったな、海。 一度3人で海を渡ってみたかったな。

「レスタト、おはよう。今日はトスカを観て来たけど、何度観ても 泣かされるよ。」
あの羊飼いの少年の歌が好きだ、と言ったら君は食べたい、と言って 僕を怒らせたね…。

 

毎日毎日、君が深い眠りから目覚めないうちは 僕達の会話は続いていくよ。

僕は、もう狂っているのかもしれない。///

Uploaded December 22, 2000